不満だ


「…な、なんだよ」
「お前こそ、何赤くなっている」
「べ、べつに」
嘘だ。本当は知っている。何の理由か、凌牙は急に自分の膝の上に臥せることになった。あぁ…理由はなんだっけ。
なんか頭が混乱しすぎで何も思いだせないだ!かっとビングな状態だぜ。
「…おい、こっちに向け」
「な、なんでだよ」
「こっちに向けろ」
「むぅ…………」
「遊馬」
あぁ。彼はこういうのが苦手なんだ。凌牙が彼を呼ぶと、遊馬は思わず振りかえりたくなるのだ。
ふと、指が遊馬の頬に触ってきた。
自分のと違い、凌牙の指先は少し冷たい。さすがシャークと呼ばれるためもあるか、やはり凌牙は海の生き物と思わせる。でも、不思議に怖くはない。冷たい指先の中に、クスと感じるナニかがある。
…触れるところは少しあたたかい。
「…フッ。すごい顔だ」
「うるせぇ」
「あたたかいな、お前」
「シャークのせいだろ。重い」
「…やわらかい」
優しく頬を撫で、凌牙は小さく口元を上げていく。
「あたたかくて、やわらかいぜ。――――遊馬」
うん。だから、何も言えなくなるじゃねぇか。

優しそうに笑う凌牙を見て、目をそらすことができず、
遊馬は恥ずかしながら不満そうに、頬をふくらんだ。


2011.11.13