誰よりも大切な君のために

緑豆さんから頂いた誕生日文です。ヨハ十です(あたりまえ)
私がリクエストしましたが…苦笑

豆さんへリクエスト:豆さんスタイルで超☆甘いヨハ十をくれ!w

と。まさか本当に甘くいただけるとは…!
豆さんありがとうー!!

緑豆さんのサイトはこちらです。よろしければぜひ!^^



















レッド寮から校舎への決して短くない道のりを、十代とヨハンは歩いている。
朝一の授業には常に遅刻するような十代だが、ヨハンと一緒に登校するようになってからは。きっちり授業に出ていた。理由は簡単。ヨハンが十代を授業に連れて来るからだ。

「なぁヨハン〜。眠い〜。」

「頑張れよ。あと少しで着くからさ。」

留学生として来ているヨハンは、授業をサボったりはしない。十代と一緒に居たいヨハンは、十代を授業に連れて行くしかなかった。

「ほら歩けって。」

「もうだめ〜。」

へなへなと腰を下ろしてしまう十代を見て、ヨハンはため息をついた。
十代は朝が弱いわけではない。だが、体調が気分に左右されやすく、やる気の無い朝は身体が起きないのだ。そんな状態でレッド寮から校舎までの道を歩くのは無茶だった。

「ったく。しょうがないな。ほら。」

ぐったりとして動く気配の無い十代に、ヨハンは手を差し出した。
それを見た十代の目は徐々に輝いていく。先ほどの死んだ魚のような目とは大違いだ。
手とヨハンの顔を交互に見た後、期待を込めた目でヨハンをじっと見つめてくる。それに頷いてやれば、十代はヨハンの手に飛びついてきた。

「俺、ヨハンの手が好きだ!」

「手だけ?」

「まさか!ヨハンが大好き!」

「よかった。俺も十代が好きだよ。」

言葉と共に頬に口付けを落としてやれば、十代の機嫌は一気に跳ね上がる。
可愛らしい笑顔をしている十代に手を引かれながら、ヨハンは教室へと足を進めた。




不真面目な十代が授業に出る。
その光景は、ヨハンが隣に居るときに限って当たり前になっていた。
十代はヨハンにぴったりと寄り添い、分からないところを解説して貰ったりしている。真面目なヨハンにつられる様に十代も真面目になり、教師たちはほくほくしていた。

「なぁ。ヨハン。ここ…。」

「ん?あぁ、ここは…。」

教室の片隅で行われるささやかなやりとり。

「できた!」

「よくできました。」

「へへ。くすぐったいぜ。」

「うれしいくせに。」

授業中に聞こえてくる軽いリップ音と、はにかんだように笑う声。それが教師に聞こえる事はないが、周りの生徒たちには筒抜けだ。十代とヨハンの周りに座りたがる生徒はいない。だが、仕方なく近くに座るときは有る程度覚悟する必要があった。

「十代。俺にもご褒美。」

「いいぜ。」

「ありがとう。これはお礼。」

「耳はやめろって。」

「いいじゃないか。十代の耳って柔らかくて気持ちいいよな。」

「もう…。俺の耳は食べ物じゃないっての。」

好意的に見れば、子犬がじゃれているだけだ。
子犬…子犬…。
生徒達はそう心の中で念じながら、視線を反らし続けた。




腹が減っては戦はできぬ。ならぬ、腹が減っては授業など出てられぬ。
というわけで、昼休みに入ると同時に、ヨハンと十代は購買部でドローパンを買い漁った。
ヨハンの要望を聞きながら、躊躇無くパンを選んでいく十代には賞賛の目が集まる。それがヨハンには自慢であった。誰よりもドロー力がある十代。そして、その十代がヨハンのためにパンを選んでくれている。
十代がパンを選び終わり会計を済ませると、皆の視線を集めながらヨハンと十代は立ち去った。

「はい。これ伊勢エビパン。」

「サンキュ。十代。」

袋を開けて齧りつけば、それはまさしく伊勢エビパン。ヨハンが頬を緩ませていると、十代も同じパンを食べている事に気づいた。

「珍しいな。十代が伊勢エビパンって。いつもくさやパンじゃないか。」

「ん。そうなんだけどな。ヨハンが食べてるから、その…。」

「俺と同じパンを食べたくなった?」

ヨハンの問いに、十代がこくんと頷くのを見て、ヨハンは頬が緩む。
いつもの伊勢エビパンが、特上の味に変わったように感じた。
互いのパンを食べさせあったりして、購入したパンは最後の1個になる。十代がドローし間違えていなければ、黄金の卵パンだ。…といっても、十代がドローしそこねることなどないのだが。
十代が袋をあけて半分に割るのを見て、ヨハンは十代に惚れ直した。

「流石十代。」

「ほ、褒めたって何もでないぞ。それにヨハンだって前に引いたじゃないか。」

「十代ほどじゃないさ。」

ヨハンもなかなかいい引きをするが、十代ほどの命中率は無い。十代に感謝しながらじっくりと味わっていたヨハンだが、十代に視線を向けたところで、つい笑ってしまった。

「な、なんだよ。」

「口の脇。ついてる。」

自分の口元を指差して場所を教えてやったが、十代はうまく拭えない。

「ここだよ。」

指を伸ばして拭ってやれば、十代ははにかむ。
だが、拭った指を舐めて綺麗にしようとしたところで、十代のストップが掛かった。

「ずるいぞヨハン。それは俺の。」

「だ〜め。拭ったのは俺だから。俺の。」

「違うぞ。その具は俺のパンの具だから俺のだ。」

十代はそういうと、ヨハンの指をぱくりと咥えた。
悪戯な十代の舌がヨハンの指を這っていく。その感触はとてつもなくくすぐったかった。

「十代。ギブ、ギブっ。」

「へへ。まいったか。」

「まいった。参りました。この通りです。」

ヨハンが頭を下げれば、十代は指を解放してくれた。
だが、濡れた指が風に当たってすーすーする。
ヨハンは肩を竦めてから、食べるのを再開した。




食べたら眠たくなる。
それは、人体の働き上ある程度仕方のないことだ。
午後の授業を眠らずに済ますには、昼休みの間に10〜15分ほど眠っておくのが効果的である。
というわけで、ヨハンは十代を寝かしつけていた。
デュエルをすると言って喚く十代を寝かせるのは、酷く骨が折れる。だが、最近ヨハンはいい方法を編み出していた。
ヨハンは木に凭れ掛かりながら十代の髪を梳いている。ヨハンが眠れるのは十代を眠らせた後だ。十代の意識がどんどん落ちていくのを感じながら、ヨハンも眠りに誘われていく。ヨハンの膝の上には穏やかな表情で目を瞑っている十代。
十代が完全に眠りに落ちたのを確認してから、ヨハンはそっと十代に口付けた。

「おやすみ十代。よい夢を。」

今日もデュエルアカデミアは平和である。


END


『誰よりも大切な君のために』