いつもサイトまで遊びに来てくれて、拍手やメッセージなど下さった方々、本当にありがとうございました。
久しぶりにフリー小説を書きました^^ よろしければお持ち帰ってくださいw
内容を読む前に、下を読んでください。


ヨハ十です
七夕ネタの小説です
お持ち帰りOKです。
今回の内容も一応健全だと…思います。多分。
設定はDA編と未来編ですね。
サイトにアップしても構いません。教えていただければ嬉しいです^^
フリー期間は…実は期間っというのはないので(あるいはサイトは続いている間に)、よろしければお持ち帰ってください!



以上でよろしければ、下に どうぞ!

本当にありがとうございました!












真っ黒な世界。
(ここは…どこ)
気が付くと彼は暗い闇に眠っていた。
ベッドもなく、テーブルもなく、光もなく、建物もなく、まるで宇宙のどこかに浮いているみたいに体は軽く感じる。
でも、動くのは凄く重いと思った。
…動けない。
(暑い…)
黒い世界の冷たい空気とは逆に身体の全身は暑いと伝わっている。動きたくても動けない。
重いからだ。
そして、こころも。
(ダルイ……)
目を開くのも疲れると思い、青年は目を閉じようと思う時だった。
どこから、光が感じた。
(…?)
額に伝わる涼しい感覚と共に腕は何かに握られ、まるで抱きしめているように柔らかな温かが肌に触る。
(―――…い)
だれ?
耳元に届く声は優しい呼び音。
(…だい)
だれ?
「じゅうだい」
数回を瞬いて、青年は青が見えた。
黒しかみえない世界はいつの間に青きが現れ、少し暗い空間に青髪の青年は少し辛そうに彼を見つめている。
自分の視線が彼に向くことを気付いただろ、少し苦く、でも彼は優しい笑顔を咲いた。
「目覚めたか、十代」
握られた手から温かさが伝わる。
…あぁ。彼なのか
「俺が分かるか?」
「…分かるに決まって…ッホ、ケホッ…」
「そうか。よかった」
赤く見える紅茶色の髪を撫で、ホッとしたように青髪の青年・ヨハンは顔を緩める。
「まだ風邪を引いているから、ゆっくり休め。っていうか、久しぶりに戻ってきたと思えば玄関の前に倒れて、俺はマジで心臓が止まったと思ったぜ。頼むから自分の体は自分で見ろよ」
「…わりぃ……。…ヨハン」
少しだけ指を跳ね、小さな動きは自分のを握る手に届き、ヨハンは頭を傾ける。
「どうした?」
「ずっと…ゴホッ、オレの手を握ってくれたか…っ?」
「ん?あぁ、そうだぜ。俺が風邪を引いた時、十代もずっと俺の手を握ってくれたんじゃん?」
クスと笑いながら顔を上げる。
手を伸ばせば届けるような天井の窓の世界。真っ黒な蒼空に一つ、ひとつ小さな星の光は其々の持つ時間を告げ、柔らかい輝きは闇を照らす。
まるで時を導いているみたいに、綺麗で優しい星の川だ。
「綺麗だな」
「…ん。…明日、雨は降るかな?」
「きっと晴れるよ」
「ヶホッ……少し、アカデミア頃のことを思い出すぜ」
夜空から鳶髪の青年に視線を戻す。
「あの時も、ヨハンは風邪で倒れただっけ」
「おう。懐かしいなー…十代が初めて俺のために焦る時だ」
「ヨハンは急に、倒れたからだろう」
今と逆だなーと小さく呟きながら十代は微笑み、ヨハンも応えに口元を緩める。
「早く休んで、風邪を治ろう」
優しく頭を撫でながら繋ぐ手を胸に置く。
「明日は一緒に、七夕の空を見よう」
「…うん」
穏やかな心の音色と温かさを感じ、紅茶髪の青年は夢に眠り始める。

空の川の旋律に耳を傾けながら。


願いの向こう




「……風邪だわ」
体温計を見ながら答える明日香に鳶髪の少年はホッとする。心配しそうに後ろのベッドに臥せる青髪の少年を見る彼を見て彼女は「大丈夫だわ」と微笑した。
「最近、天気は暑くなったり涼しくなったりしたから、多分そのせいよ。あまり酷い風邪じゃないと思うけど、今日はゆっくり休む方がいいわ」
「…で、俺は風邪ってこと?」
「えぇ」
「よかったー」
やっと安心したか、鳶髪の少年・十代は椅子に腰を下ろしながらため息をつく。
「もう本当に心臓に悪いなーヨハンが急に倒れるからどうしたかと思ったぜ」

事情は朝のことである。
いつも通りに学園に向かう前にヨハンはレッド寮まで来て十代と一緒に登校するが(ルビーがヨハンをレッド寮まで連れて行く)、何故かあの日にヨハンの姿は居なかった。
始めに寝坊じゃないかと考えたが、いつも十代より朝早く起きるヨハンは違うと思い、食堂からドアを開く時だった。
十代が探している人物は目の前にいた。
『おう!おはよ、ヨハ…』
だが次の瞬間、少年は彼の肩に預け、突然な重力で二人はフロアに倒れこんだ。
『うおおお?!よ、ヨハン!おーもーいー!』
『だっ…大丈夫っスかアニキ!』
『ヨハン、大丈夫か?ヨハン?』
自分の上にいる少年を退かせようとする時、手は背中に触る。
(…ん?)
ふと感じた。
彼より体温が低いヨハンは、いつもより温かい気がする。
むしろ、熱いくらいに…
『…っ!ヨハン!オイ、ヨハン!!』
何度呼んでも返事がない彼。
何度呼んでも目覚めない彼。
『―――ルビーッ!』
鳶色の少年はやっと気づく。

青髪の少年は、意識を失った。


「本当にびっくりしたぜ…あんなヨハンを見るのは初めてだぜ」
「弱いってなんだよ…ケホッ……」
「まだ喋らない方がいいわよ、ヨハン君」
チラリと隣で心配そうに彼を見る十代を覗き、明日香は一度目を瞬いた。
「十代。私、お粥を作るから、トメさんところに必要な材料を取りに貰えないなのかしら?」
「え?あ、うん。いいけど…。」
「ヨハン君は私が見るから」
「う…ん。ありがと、明日香!じゃあオレは行ってくる!」
「えぇ。行ってらっしゃい」
足音は遠くなり、廊下の回り響きが消えるとわかり、明日香は部屋のドアを閉める。
「なに、が」
彼女はヨハンに振り返った。
「……明日香、は…何が言いたいか……?」
「別になにも」
お盆に新しい水を入れ替え、タオルを洗いながら彼女は応える。
「ただ、ヨハン君が羨ましいと思うだけ」
「…うらやま、しい…?」
水を拭き、一度頭を頷くと彼女は続いた。
「私たちが風邪を引いても十代はこんな風に焦ることはないわ。お見舞いはするけど、相手の面倒を見るのはなかったわ」
彼は人と深く仲良くすることはない。
何かを避けているか分からないが彼はいつも一歩を下げて仲間と遊び、心を開くことはない。
何かいけないような。
何か駄目のような。
「でも、十代は凄く貴方のことを心配している」
正直、彼女にはわからない。
どうして三年間もずっと一緒に居た彼女達ではなく、たった三ヶ月しか知り合っていない彼なのか。
「だから羨ましいわ、私」
盆の水とタオルを持って彼の元に向かい、適当な水をつけてタオルを彼の額におく。
「十代が戻ったら私はお粥を準備するわ。それまではゆっくり休んで」
「サンキュ…」
「今夜の祭りに間に合えばいいね」
「……まつり?」
意味が分からないようにヨハンは頭を傾いた。
「何のまつりだぁ…?」
「そうね。七夕は知っている?」
「いいや。全然」
「うーん…」と小さく呟く明日香は考えながら説明する。
「簡単に言うなら、七夕は年に一度しか会えない恋人達が会える日なのかしら?相手に会うために二人は仕事をサボったため、神様は二人を届かないところに分けた。でも、二人の悲しさに感動された神様は年に一度二人に会わせる日を与え、鳥達が橋を作って二人に会わせるわ」
「かなり…ロマンチックな話だな…それで、まつ…ッホォッ…まつりと何が関係あるんだ…?」
「詳しくは分からないけど、デュエルアカデミアは七夕の日の夜に必ず祭りをするよ。確か、オーナーの決定らしい」
「…海馬さんが決めたこと、か…。明日香は、どう思うんだ?この日を」
「え?そうね…あまり会えないとは、辛いと思うわ」
「そっか。俺とは逆だな…」
「?」
「年に一度会えるなんて、幸せと思うぜ」
少しだけ子供頃のことを思い出す。
彼はまだ分校に預かってもらっている前、モクバは彼を海馬ランドに連れてきたことがあった。
丁度あの日は確か、あるまつりの日だった。
『年に一度会える人達と会いたくても永遠に会うことができない人達。兄様はその悲しみと辛さを知っているから、この日の夜だけ、皆に楽しんでいたい。…兄様が一番会いたかった人は、もう会うことができない』
『それは、悲しいこと?』
『うん。とても悲しいこと』
青髪の子供に黒髪の少年は緩やかに伝う。
『どんな金があっても、権力があっても、力があっても、…この世界にいない人は、もう会うことができない』
この世界にいない人。
…あぁ、亡くなったってことだと、あの頃の子供は何故か分かった。

「フ…少し言いすぎだ。わりぃ」
「いいわ、」
「明日香ぁー!ヨハァー!」
返事する前に部屋のドアは開かれ、鳶髪の少年は戻った。
「トメさんから貰ったぜ!ハイ、お粥の材料だ!」
「あら、ありがとう、十代。助かったわ」
何だが感じが全然違うけど!!
自分へとはまったく違う態度でうれしそうに十代と話す明日香を見てヨハンは思わずツッコミしたくなった…が、目で殺されたくないので言葉を喉に戻した。
「じゃあ私はレッド寮のキッチンを借りてくるね」
「あぁ!サンキューだ、明日香!」
(…へぇ)
彼女もこういう笑顔をするんだ
誰よりもプライドが高く、ブルーの女王と呼ばれる明日香はある少年と話すときだけが普通の女の子に見える。
前から気付いたが、彼女はやはり…
「?どうした?ヨハン」
「…いいや。なんでもねぇ」
軽く頭を振りながらヨハンは応え、「?」と頭を傾く十代だが、改めて笑顔を向かい、彼はヨハンの側に座る。
「気分はどうだ?まだしんどいか?」
「ちょっとな…でも、今夜も治れそうにないからぁ…ゴホッ、ゴホォ…皆と、まつりに行って来いよ」
「嫌だ」
即答かよ!
「ヨハンを置いて行くなんてオレ、こんな人に見えるか?」
「いや…そういう意味じゃ、」
「オレ、邪魔?」
「違っ!ヶホッ!ケホォ…ッ!」
「オイオイ、大丈夫か?」
突然体を上がるため咳きは再び現れ、出来るだけ十代は優しくヨハンの背中を撫で、彼をベッドに臥せる。
「ヨハンが治るまでオレはここに居るぜ」
少年の腕に伸ばし、抱きしめるように十代は両手でヨハンの手を緩やかに握り締めた。
「早く風邪を治って、七夕の空を見に行こう」
見せる笑顔はまるで夜空を照らす月のように。
「なぁ?」
「…おう」
指から伝わる温かさに彼は救われた、気がした。

――――オレはお前と一緒に見たい

明日香や翔、万丈目や剣山と見たいじゃなくて、オレはお前と一緒に見たい。お前に見せたい。
年に一度だけ現れ、願いが叶えるあの瞬間
何があっても、必ず………




――――……。
「じゅうだい」
ゆっくりと琥珀色の眸は目覚める。
見覚えがある天井とベッドの感覚、でも目の前の者は少年ではなく、青年の姿。
…あぁ。
懐かしい景色だ。
「具合はどうだ?」
「…なんでヨハンは少年じゃなくて大人の姿なのか、間違うところだけど…大丈夫だぜ」
クスと笑う十代はヨハンに応える。
「懐かしい夢を見ただけだ」
「寝ぼけていないかーよかった」
優しく頭を撫で、青髪の青年は微笑む。
「大分よくなったな」
「あぁ」
「じゃあ十代、見に行こうか」
「?」
十代に長いコートを着せながら彼をベッドから抱き上げ、ヨハンは部屋を出る。
「俺とお前だけの、祭り」
目の前の景色に紅茶髪の青年は瞳を見開いた。

深い蒼空に星は輝き、川のように星は雲がない夜空に柔らかい光を表れ、まるで願いを叶えているように星の川は二つ大きな星と繋がっている。
架け橋のような、
願いは届いたような、

星は優しく輝いている。
「―――…これ、は」

まるで昔に戻ったように。
結局、風邪を完治することができず、まつりに参加できなかったヨハンに十代は彼に暖かそうな服を着かせ、レッド寮の天上まで連れていた。
少年に、彼達を抱きしめるくらい広い夜空を見せた。
『見ろよ、ヨハン!ここは一番綺麗に夜空を見える場所だぜ!オレの気に入れだ!』
あの頃の青髪の少年は空と鳶髪の少年を見つめ、初めて思った。

もし一番会いたい人はこの世界にいないなら、彼は確かに耐えられない。
だがもし、会いたい人はまだ世界のどこかにいるなら、彼はきっと会いにいく。
探しに行く。
…約束があれば、彼はきっと待ち続ける。
年に一度じゃなくても、数年に一度しか会わなくても、会えれば、
彼は待つ。

一番会いたい人が、彼に笑顔を向きながら側に来てくれるなら


「…わざとデュエルアカデミアまで戻って、オレにこれを?」
「俺にとって最高の七夕を、十代に見せたい」
「へぇー…これはヨハンが星に叶えて欲しい願い?」
「んー…いいや」
少し強めに十代の肩を抱きしめ、青眸は彼を映る。
そして、恥ずかしそうにヨハンは笑った。
「毎年も、『また会えますように』って書いた俺はやはり可笑しいかな?」
「…ありがとう」
少しだけ肩の腕に指を伸ばし、青年の手の上に置く。

かつて気持ちを伝えたあの夜のように。
『ありがとう、十代!…―――』

最高な七夕を、ありがとう


一瞬だけ愕いた少年/青年だが、すぐに口元を上げ、
目の前の者に笑顔を咲く。

同じ内容が書かれている二枚の願いは笹の葉と共に風の中に舞い始めた。



何ヶ月、何年間待っても会う日を待ち続く
再びお前に会えるなら


Fin.



DA編+未来編・ヨハ十『願いの向こう』

七夕+風邪ネタでDA編と未来編。もし気に入ってくれたらお持ち帰ってください。どうぞですw
本当はオマケも書きたいけど……まだ思いつかないので、また今度にしましょう(苦笑)

ありがとうございましたー!


2009.07.15