好きだよ

柔らかい音色は水の奥へ響き渡る。
小さな波紋は現れ、広がり、消えてゆく。
冷たい水の筈なのに温かく感じる。
光に照らされた流れの上に空が見える。
…広がる暖かい空色の髪糸。

『じゅうだい』
抱きしめるように水は少年を優しく包む。
…心は安らかになっていく。

おれをよんでいるのはだれ?
『ふたたび』おれにつたえることがあるのはだれ?

腕で自分を抱き締め、耳を傾けながら彼は微笑する。

『じゃあ、またあした』
…あぁ。
また明日。またあえる。
だから果たそう。
また果たそう。約束しよう。
何日間、何週間、何年経ってもここでお前を待ち続ける。
お前の『帰り』を待ってやる。
そして今度こそ、お前に伝えたい。

ゆっくり、緩やかに静かに
水の奥に少年は目覚めた。

 

あの時いえなかった だいじなことば