「遊星、今日はもう休め。クロウが戻ったらあそこに置いている注文と荷物をアイツに伝えてくれ」
「わかった。…?出掛けるのか」
「あぁ。カーリーが出かけたいって煩がったからな」
「(クス)そうか。彼女は元気そうだ」
「…まぁな。行ってくる」
暫くの後、アキは現れた。
「こんばんわ、遊星」
「?あぁ、アキか。こんばんは」
「さっきジャックを見掛けたけど、彼は出掛けるの?」
「あぁ。カーリーと約束があるらしい」
「ジャックもかわったね」
「そうだな。…今日は何があるのか?アキ」
「その前に、今日の仕事は終ったの?遊星」
「あと少しで終わるが…」
「じゃあ終ったら付き合ってくれないかしら?」
「…出掛けるか?」
「えぇ」
「アキの家…?」
「ちょっと座ってくれないかしら?すぐにお茶でも出すわ」
「あ、あぁ。……?」
ふと目の前の写真立てを見る。彼が見たことがない制服の姿のアキ。日期をみたら、少し前の写真のようだ。
「あれは私がまだDAにいる頃の写真だよ。遊星はミルクだね」
「ありがとう。…アキは既に卒業したか?」
「まだよ。途中に逃げ出したから、まだ卒業していないわ」
「戻らないのか?」
「少し、これについて話したいけど」
「俺で良ければ」
「ありがとう、遊星。…私、少し怖いわ。私の力はたくさんの人々を傷付いてきた。例え今はしなくても、皆はまだ昔の私を怖がっている。」
「だが、進まないと何も始まらない。…今のアキなら、大丈夫だ」
「何故?」
「確かにバラはトゲがついている。でも、ちゃんとトゲを取れば、バラはもう人を傷付かずに済む。今のアキは、優しい薔薇じゃないか」
「…ふふ。やはり遊星は凄いよ。こんな言葉、言われるのは初めてだ」
「俺は、アキが学校に行って欲しい。アキはまだ楽しめる時間があるなら、楽しめばいい」
「…学校は楽しいなのかしら」
「俺は学校に行ったことがないが…たくさんの仲間と一緒に勉強することができれば、俺は楽しいと思う」
「…そう。…明日、パパとママに相談してみるわ」
「あぁ。頑張れ」
「そういえば遊星は甘い物、大丈夫?今度、何かを持っていくわ」
「普通に大丈夫だ。サテライトには偏食はできないが…ジャックとラリーは凄く甘め物が好きそうだ」
「…え?ジャックが?」
「何度もラリーとお菓子のため喧嘩してきた。俺は普通に食べる方だ」
「ジャックが甘め物…初耳だわ。…あ、ちょっと待って、遊星。確か部屋にはまだクッキーが残ってい…っ!」
「!アキ!」
突然バランスが取れなくなり、地面に倒れて行くアキに遊星は彼女を抱きしめ、背中から悲鳴は伝わってきた。「くっ…」
「!大丈夫か!遊星」
「大丈夫だ…アキこそ、怪我はない、……」
突然視線の近くに入る瞳。
しばらくお互いを見つめると一人は先に動いた。
「…ア、」
「ごめんなさい」
髪に触る前に少女は自分から離れ、遊星は目を瞬いた。
「背中は大丈夫か?遊星。ちょっと待てて、すぐにクスリや包帯でも持ってくるわ」
「あ、…あぁ」
(さっき)
何をしようとしたんだ?…俺は。
思わず頭を抱く遊星だった。
『自覚する前』
2009.06.21