お題・遊アキ
『世界は広がる』


「……」
「?どうしたの、遊星」
「…アキの髪、前だけは長い」
「え?あ、うん。昔の癖で…ね」
「癖?」
「…遊星は、知っているでしょう?私はまだDAにいる頃のこと」
「…あぁ。少しだけは聞いている」
「この力のせいで、みんなも私を避けて…私に近づくことが怖がるけど、…目だけはずっと私を睨んでいたわ」
近づけられないなら視線で攻撃しよう。まるでそう言っているように周りの人の目は酷く冷たくて痛い。
「…私はいつでも感じるわ。皆は私を睨んで、早くここから去れって.…あのときから、私は前髪を伸ばしてきた」
「――…周りを見ないため、か」
「…ええ。前の道を見ればそれでいいの。前髪のおかげで皆を見えずに済んだわ。…結局、これはただの言い訳だわ」
「……アキ」
「っちょっと、ゆうせ…」
突然、手袋を外した両手は顔を触る。
少し実感する。
自分の手と違う、熱いほど感じる男の手。
…あぁ、僅かのオイルのにおいが伝わってくる。やはり彼の手だ、とアキは感じた。
できるだけ軽く彼女の顔を触り、抱き締めるように手を頬に置きながら、アキの顎をあげる。
少し揺れる瞳は彼の視線に入った。
「俺が見えるのか?」
「え?」
優しく髪飾りを外し、紅い前髪は花を咲いているように広がる。
撫でるように、遊星は髪を左右に移り、まっすぐとアキの眸を見つめた。
「今、お前の視線に俺はいるか?」
「…遊星」
「アキは、」
少し迷うが彼は続いた。
「俺を、視線の中に入って欲しい」
「……馬鹿な遊星」
腕を上げ、彼のと違い、少し冷たい細く長い指は遊星の眸を触った。
「あなたの瞳、映っているじゃない?…私の姿」
「…あぁ。映っている」
「じゃあ私の目に、あなたはいる?」
「…うん、いる」
「それが答えだよ」
「……そうか」
頬を緩め、遊星は小さく微笑う。
「ありがとう、アキ」
「それは私のセリフだわ」
(ありがとう)
(私を一人のアキとして見てくれて、ありがとう)

世界は、あなたのおかげでひろがったよ



『世界は広がる』
遊アキです。そして何故か私はまたエチャ女王に言われています。…なんで?!^q^

2009.06.21